「職場で行う健康診断で、CTスキャンとMRIを撮ってこいって言われてるんだけど、普通の会社って、ここまでするの?」
事務所に顔を出してすぐに言われた内容は、聞く人が聞けば首を傾げる話だった。
「オマエさん、何かしでかしただろう」
「何もしてないよ」
のほほんと答える愛娘だが、リンとナルの目線は、麻衣の頭部を見詰めている。
何をやらかしたんだ。
マッドな二人が、興味をひくようにことをしたに違いないが、当人は心当たりがないとばかりに首を傾げている。
「事務所負担だから、麻衣が気にすることは無い」
ナルが、そう告げると、ムスメの顔が綻んだ。
「そうなんだ、タダなら受けてみようかなぁ」
「明日には予約が入っているから、忘れるな」
駄目押しとばかりに強く言われ、困惑した声が上がる。
「え!明日なの。これって、9時からになっているけれど。明日普通に学校だよ。あたし」
病院の予約表を手渡された麻衣が、ナルと用紙を交互に見詰めていた。
「こういうときこそ、休んで行って来い」
「えー!調査でもないのに、学校を休むの?」
驚きに目を見開き上擦った声を出すムスメに、リンが諭すように言葉を発した。
「仕事の一環ですよ。谷山さん」
「リンさんも行くの?」
「私は、2日後です」
そっか、リンさんも行くのかと呟いているが、それって、どう見ても、麻衣の撮影された画像を入手するために出掛けるのだろう。
「ぼーさん、明日なんだけど」
「分かった付いていってやる」
「ありがとう」
大病院に一人で行くのは心許ないのだろうムスメの声に、安心するように答えてやる。
ただし、このあと、この二人がムスメにどう接触してくるのか、非常に不安になる父心の俺だった。