「なっ、ナル」
彼女が悲壮な声で、僕の名を呼ぶ。
「もう……限界…」
赤から青へと彼女の顔色が変わっていく。
抱きしめていた腕を、麻衣が渾身の力で振りほどく。
「漏れるぅ」
顔を俯けてそう呟くと、素早く部屋から抜け出した。
個室から、なかなか出てこない彼女を入口で待つ。
扉が勢いよく開いて、麻衣が飛び出してきた。
予測範囲の行動に、こちらも相応の対応をする。
「うわっ」
勢いが付いた身体を抱きとめ、毛布に包みこむ。
「どこへ行く気だ」
「着替えようと思いまして」
全裸のまま寝室から飛び出した彼女は、素肌を曝け出し僕の腕の中にいた。
「二度も逃げられたのだから、観念してもらおうか」
「二度って何?でも、二度あるとこは三度あるっていうよ」
「ここは、三度目の正直だろう」
「うわっ、ナルが諺を口にするなんて……。100年早いわ。ボケ」
尿意を我慢できず、全裸で個室へと走り去った失態で、キレ気味な麻衣へと密かな苛立ちが募る。
「やかましい」
毛布ごと麻衣を包みこんで、抱きかかえる。
耳元で煩く騒ぐ麻衣の口を、言葉ごと封じる為に、しっかりと己の唇で塞ぎ止めた。