intoxication.2




「なっ、ナル」

 彼女が悲壮な声で、僕の名を呼ぶ。

「もう……限界…」

 赤から青へと彼女の顔色が変わっていく。
 抱きしめていた腕を、麻衣が渾身の力で振りほどく。

「漏れるぅ」

 顔を俯けてそう呟くと、素早く部屋から抜け出した。



 個室から、なかなか出てこない彼女を入口で待つ。
 扉が勢いよく開いて、麻衣が飛び出してきた。
 予測範囲の行動に、こちらも相応の対応をする。

「うわっ」

 勢いが付いた身体を抱きとめ、毛布に包みこむ。

「どこへ行く気だ」
「着替えようと思いまして」

 全裸のまま寝室から飛び出した彼女は、素肌を曝け出し僕の腕の中にいた。

「二度も逃げられたのだから、観念してもらおうか」
「二度って何?でも、二度あるとこは三度あるっていうよ」
「ここは、三度目の正直だろう」
「うわっ、ナルが諺を口にするなんて……。100年早いわ。ボケ」

 尿意を我慢できず、全裸で個室へと走り去った失態で、キレ気味な麻衣へと密かな苛立ちが募る。

「やかましい」

 毛布ごと麻衣を包みこんで、抱きかかえる。
 耳元で煩く騒ぐ麻衣の口を、言葉ごと封じる為に、しっかりと己の唇で塞ぎ止めた。
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